新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が増加しており、また大阪府など一部の地域でインフルエンザも増加しています。

これらの疾患の特徴の違いについてまとめました。

 

インフルエンザと新型コロナの症状は?

新型コロナとインフルエンザに共通する症状(筆者作成)
新型コロナとインフルエンザに共通する症状(筆者作成)

 

咳、ノドの痛み、鼻水などの気道症状、発熱、頭痛、筋肉痛・関節痛、だるさなどの全身症状が出現します。またどちらの感染症も、感染しても症状が出ない人が一定の割合でみられます。

新型コロナが出現した当初は、嗅覚・味覚の異常という特徴的な症状がありましたが、現在主流となっているオミクロン株では稀になっており、またノドの痛みや鼻水の頻度が高くなっていることから、症状だけで区別をつけることは困難となっています。

特に重症化リスクの高い人では、どちらの感染症なのかを区別して治療するために検査が必要となります。

 

インフルエンザと新型コロナの潜伏期の違いは?

新型コロナとインフルエンザの潜伏期の違う(筆者作成)
新型コロナとインフルエンザの潜伏期の違う(筆者作成)

 

潜伏期とは、ある病原体に感染してから、何らかの症状が出るまでの期間を言います。

インフルエンザの潜伏期は1〜4日(約2日)であり、新型コロナの潜伏期は流行初期は約5日と言われていました。

しかし、様々な変異株が出現して以降、だんだんと新型コロナの潜伏期は短くなってきています

オミクロン株では潜伏期が約3日になっており、インフルエンザの潜伏期の約2日よりもまだ1日ほど長いものの、だんだんと近づいてきています。

ただし、潜伏期には人によってばらつきがあり、新型コロナでは最大で14日ほど経ってから発症する人もいます。

 

インフルエンザと新型コロナの感染経路、感染者から周囲にうつる期間の違いは?

インフルエンザの感染性のある期間(https://doi.org/10.1038/s41591-020-0869-5より)
インフルエンザの感染性のある期間(https://doi.org/10.1038/s41591-020-0869-5より)

 

どちらもウイルス性呼吸器感染症であり、ほとんどの場合は飛沫感染・エアロゾル感染によって広がります。

どちらも、感染した人が咳をしたり、くしゃみをしたり、話をしたりするときに排出される、ウイルスを含んだ大小の粒子が主な感染経路となります。

他の人に触れたり(例えば、手にウイルスが付着した人と握手したり)、ウイルスが付着した表面や物体に触れた後、自分の口、鼻、目に触れることによって感染する可能性がありますが、新型コロナでは環境からの感染はほとんどないことが分かってきています。

 

インフルエンザは、主に症状が出た人から広がると考えられています。

インフルエンザの感染者は、発症から3~4日間が最も感染力が強いようですが、人によってはもう少し長い期間、感染力を維持することもあります。

学校保健安全法ではインフルエンザの出席停止期間は 『発症した後 5 日を経過し、かつ、解熱した後 2 日(幼児にあっては 3 日)を経過するまで』とされており、社会人もこれに準じて自宅療養することが望ましいでしょう。

 

新型コロナの自宅療養・隔離期間(筆者作成)
新型コロナの自宅療養・隔離期間(筆者作成)

 

インフルエンザと違い、新型コロナは症状が出る前から人に感染させることがあり、発症する前後が最も感染力が強いと考えられています。

発症後もしばらくは感染力が強く、発症10日目くらいまでは人にうつすことがあります。

現在は最短で発症日をゼロ日として8日目に自宅療養は解除となりますが、その後も数日間は周りに感染させないように注意しましょう。

 

新型コロナとインフルエンザ、重症化リスクの違いは?

新型コロナに罹患したときに重症化リスクの高い方と、インフルエンザに罹患したときに重症化リスクが高い方は、ほとんどが共通しています。

新型コロナに罹ると重症化しやすい方

・65歳以上の高齢者

・悪性腫瘍

・慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、脳血管疾患

・肥満(BMI 30以上)

・喫煙

・免疫不全者(固形臓器移植後、免疫抑制薬・調整薬の使用、CD4 200未満のHIV感染症)

・妊娠後半期

厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症診療の手引き 8.1版を元に筆者作成

 

インフルエンザに罹ると重症化しやすい方

・生後6ヶ月から5歳の小児

・50歳以上の人

・慢性肺疾患(喘息を含む)、心血管疾患(高血圧症を除く)、腎疾患、肝疾患、神経疾患、血液疾患、代謝性疾患(糖尿病を含む)を有する成人および小児

・免疫不全者(免疫抑制剤使用、HIV等を含む)

・妊婦

・アスピリンやサリチル酸を含む薬を服用しており、インフルエンザ罹患後にライ症候群を発症するリスクのある小児および青年(生後6ヶ月から18歳まで)

・著明な肥満(BMI>40の成人)

・介護施設や慢性期病棟の入所者

米国CDCの文献(MMWR Recomm Rep. 2022 Aug 26; 71(1): 1–28.)を元に筆者作成

 

新型コロナでは小児は成人と比較して重症化リスクは低いと言われていますが、インフルエンザでは5歳未満は重症化しやすいと言われています。小児ではインフルエンザ脳症などが問題となることがあります。

 

ただし、2022年に入ってからの20歳未満の新型コロナによる死亡者数はすでに40例を超えており、2009年の新型インフルエンザのときの20歳未満のインフルエンザによる死亡者数と同程度となっています。感染者数の多さ、流行の規模を考えると小児にとっては新型コロナも危険な感染症と言えます。

 

また、新型コロナとインフルエンザの致死率はだんだんと近づいていると言われていますが、70歳以上の高齢者においては新型コロナの方がまだ致死率は高いという試算が出ています。

 

新型コロナなのかインフルエンザなのか、症状だけでは区別が困難であることから、いずれかの重症化リスクに当てはまる方は特に早めに診断・治療のために医療機関への受診をするようにしましょう。

 

新型コロナとインフルエンザ、治療法の違いは?

インフルエンザと新型コロナの比較(筆者作成)
インフルエンザと新型コロナの比較(筆者作成)

 

いずれの感染症も有効な治療薬があります。

インフルエンザ、新型コロナともに発症からなるべく早い時期に内服または点滴を行った方が効果が高いと考えられます。

インフルエンザには飲み薬(オセルタミビル、バロキサビル)、吸入薬(ラニナミビル、ザナミビル)、点滴(ペラミビル)など様々な剤形の治療薬があり、症状のある期間を短縮する効果が期待できます。

新型コロナでは、軽症の時期には重症化リスクのある人のみが対象となり重症化を防ぐ治療薬(レムデシビル、ニルマトレルビル、モルヌピラビル)と、重症化リスクのない人も対象となり症状のある期間を短縮する効果が期待できる治療薬(エンシトレルビル)とがあります。

いずれも医師の処方が必要となります。

 

新型コロナとインフルエンザ、予防法の違いは?

新型コロナの感染経路(Nature Reviews Microbiology volume 19, pages528–545 (2021)より)
新型コロナの感染経路(Nature Reviews Microbiology volume 19, pages528–545 (2021)より)

 

どちらも飛沫感染・エアロゾル感染と接触感染による感染症ですので、基本的な予防策は同じです。

接触感染についてはこまめな手洗い、飛沫感染・エアロゾル感染については屋内でのマスク着用、部屋の換気といった感染対策が重要です。

また、いずれの感染症にもワクチンがあります。特に今年の冬は新型コロナとインフルエンザの同時流行が懸念されていますので、それぞれの感染症を予防するためにワクチン接種をご検討ください。

 

手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作)
手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作)